今月のコラム


2000.12

イータカネット氏の緊急レポート

今、早稲田商店街が熱い!

 

皆さんは、母校早大周辺の商店街にどのような思い出をお持ちでしょうか。まさか、仕事で早稲田を訪れるとは思ってもいませんでしたが、先日20日、長岡市商店街連合会の方々と早稲田商店街を視察してきました。(幹事会は欠席でスミマセン)

早稲田商店街は最近、「エコ・ステーション」という空き缶やペットボトルのリサイクル活動で有名になり、全国から修学旅行生がやってくるほどに盛り上がっています。   

私たちが、都電駅前のグランド坂下にある1号ステーションに入ってみると、簡単なゲームが楽しめる「カラクリ分別回収機」が2台設置されているだけです。

では、この商店街の何が一体、注目を集めているのでしょうか。 それは商店街スタッフのお話を聞き、さらに次の訪問先、近くの食料品スーパー「稲毛屋」で買った一冊の本「スーパーおやじの痛快町づくり」(講談社)を帰りの車中で読んで、よくわかりました。

「エコサマー・フェスティバル」、「全国リサイクル商店街サミット」、「環境饅頭」、「電脳商店街」・・・などなど。ようするに「環境」をキーワードとして、苦境に立たされた商店街の活性化とサバイバルのために、あれやこれやの工夫とアイデアを凝らしているのでした。

まちづくりの仕掛け人は、商店街会長で早大OBでもある稲毛屋の安井潤一郎社長。そしてサポーターとして商店街ネットワークをつくり、応援するのが、今年の夏、自治体学会のパネリストとして長岡を訪れた、現役高校生社長である木下斉君(早大高等学院3年)。また、ベストセラー「五体不満足」で話題となった乙武洋匡さんも、当時はこのグループの熱烈なメンバーの一人でした。

学生時代、ずっと西早稲田1丁目に住み続けた私としては、昔稲毛屋に買い物に行くと、店の奥で肉を切っていたあのオヤジがこんなに有名になってしまったことに笑ってしまうと同時に、何かとても深い感慨に浸ってしまいました。

私たち一行は当日、やはりグランド坂下の「天ぷら金城庵」で昼食を食べましたが、となりでは現在、教育学部大学院に学んでいる、元中日ドラゴンズで野球解説者の谷沢さんが、鍋焼きをすすっていました。

大手通商店街連合会は、このほぼ1ヶ月前にも団体で早稲田を視察しています。同様に空洞化対策に悩む我が中心市街地が、早稲田から何を学び取ろうとしているのでしょうか???

 


産業立地誌2000年2月号掲載記事より抜粋

スーパーおやじのまちづくり

早稲田商店会会長  安井潤一郎

「エコステーション」というのは、まちの一角の小さなスペースに、空き缶とペットボトルの回収機を置いたものです。この回収機に空缶やペットボトルを入れると、ゲームが始まる仕組みになっていて、当たりが出るとチケットがもらえます。ラーメン一杯無料券とか、散髪一回無料券とか。このチケットが商店街で使えるのです。こうすれば集客にもつながります。ラーメン一杯無料券を使いたい子供が、家族と一緒に来て、みんなで注文してくれるのですから。このエコステーションも、もともとは空き店舗対策でした。

エコステーションは今、1号館から3号館まであるのですが、この3号館には新たに生ゴミ処理機を設置しました。専用の袋に集めた生ゴミを装置に入れると、その重さが記録されます。個人の電話番号がコードになっていて、100kgたまるとキャベツと交換してもらえるようになっています。「ワセダブランド」の文字の入った専用のリサイクル袋は、商店会から特許を出願中です。

各地から見学者が集まっています。おもしろいことに、修学旅行のコースにも入っているのです。最初に来たのは、岩手県と愛知県の中学生でした。一昨年4月のことです。この話の依頼が来たときは、「何でまた」と思いましたよ。以前に岩手県内で講演をしたことがあったのですが、その中学校の先生が講演録を読んで興味を持たれたらしいんですね。

早稲田大学の構内と商店会の活動が見学コース。エコステーションで空缶回収も体験してもらいました。この時にきっちり対応したら、「来年もぜひ伺います」という電話がありました。

中学生10人につき1人くらいの割合で、早稲田の学生が付いてガイドをしたのです。中学生たちが「3年たったら早稲田に入るぞ」と思うようなガイドをしてみろ、ということで。

そして実は、さらにもうひと工夫しました。修学旅行生から、1人1300円分の説明料をもらうようにしたのです。でも、1300円のうちの850円は商店会の中の買い物チケットです。それを日本の通貨「円」ではなく、「ワセダ」としました。中学生たちは、計850ワセダ分のチケットを持って、買い物をしたり食事をしたりしてくれるのです。店で使われた買い物券を、商店会が95%で換金する仕組みです。5%がコミッションで、それでチラシやチケットを作るのです。

この計画を200店程の飲食店に呼びかけたところ、当初参加したのはたった12店でした。今の商店街ってそんなもんなんですよ。でもこういう場合、みんなで一緒にやろうと思ったら100年たってもできない。できる人だけでやればいいのです。かつ排他的にならず、「こんなことやってるんだよ」と常に情報発信していくことです。現在の参加店舗は30店ほどになっています。

エコステーション3号館など数ヶ所では、「軒先パソコン塾」と称してパソコン教室を開いています。大学で余ったパソコンを使って、大学生が地元の人に教えるのですが、受講資格は「パソコンにほとんど触ったったことがない中高年の方」ということになっています。ここでは必要以上に難しいことは教えません。最低限の目安として、メールができるようになることが目標です。こういうことを無償でやりました。

受講生の方は、学生たちに、パソコンを教わったお礼をします。何をして欲しいか学生たちに聞いたところ、「朝起こして欲しい」「休講の時に昼寝をさせてくれ」「スキーの道具が邪魔だから置かせてくれ」なんてことで、これなら中高年の受講者にも十分応えられます。

さらに驚いたことに、受講者が旅行に行ったりすると、「私にパソコンを教えてくれた学生さんへ」とお土産をもってきてくれるわけです。今の学生たちはそういうことに慣れていないから、ショックを受ける。「きちんと教えてあげたからだろう。ありがたくいただいておきなさい」と言っています。こういう思わぬ交流も生まれています。

インストラクターは学生だけにとどまらず、職場をリタイアした元サラリーマンからも手伝いの申し出が来るようになりました。彼らは全人生を会社と国に捧げた人たちですから、リタイアしたら行くところがない。でも、彼らの持っている能力というのは我々の想像を絶するものです。それをまちがうまく使えれば、大きな効果があります。

これは、テレビ番組でもとりあげられました。テレビで放送されるということには、大きな意味があるのです。ワセダはこんないい町だ。というのがテレビに出ると、地元の大人たちがプライドを持つようになります。大人の考えは子供に影響を与えますから、子供たちも絶対に町を大切にするようになります。ですから、うちの町にはゴミが落ちていないし、コンビにの前で座り込む姿もありません。

・・・・・正直言って、最初は役所の力でした。日本の役人の能力の高さは異常です。でも、集まるとだめなんですよね。私は常々、なぜ役人の人たちからはおもしろいアイデアがでてこないのだろうと不思議でしょうがなかったのです。でも、失敗してもいいんだということを前提に色々と話をしてみて分かりました。彼らから「責任」という言葉を除いただけで、いくらでも案が出てきたのです。自分たちのアイデアによってまちが動かせるから面白い。こうして役人の人たちに入ってもらって、まちは動かされたのです。自分たちで動けるようになったのは3年目くらいからです。

まちづくりに関して、よく「市民参加」ということが言われますが、本来は市民の活動に行政が加わる「行政参加」であるべきなのです。

まちの元気がどこから生まれるかというと、住民が自信を持つことから生まれます。自信を失わせる要素としては、お金がない、人がいない、場所がない、など色々ありますが、お金がなければ安くやればいい、人がいなければみんなで手伝う。場所がなければどこかの集会所を借りる・・・などと、ひとつひとつ解決していけばいいのです。

・・・・・うちの商店会で他に工夫したのは、まちの「女性部」をつくったことです。ここでの情報の共有も、メーリングリストでやっています。分からない人のために、「メーリングリスト、それ?」というサブタイトルを付けたパソコン講習会を開きました。この女性部をどんな風に活用するかというと、メンバーを集めて、新製品の試食会、お試し会をやろうというわけです。

・・・・・これからの時代のキーワードは、「みんな寄ってたかって面白く」だと思います。これが、物事を続けるポイントです。今、これだけ豊かな生活をしていながら、豊かさを実感できない。それはなぜか。価値基準が銭を儲けることに偏っているからです。本当に大切なのはどう使うかなのです。

・・・・・・などなど興味深い話は延々と続くのです。

 


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