今月のコラム


2001年7月4日

追悼・岩淵弘俊君

友人・太田 修

岩淵君、ゆっくり休んでください。

君は昨年の11月の末、病床に伏して以来眠りつづけていたのだが、まだ足りなくて、あの世で寝たく思ったのか、旅立っていった。(7月3日死去)

なるほど僕らの世代は忙しすぎた。父たちが戦争から帰って来て、空前のベビーブーム。食う物が足りない、保育園がない、小学校が足りないと大きくなっていった。中学も高校も、僕らが並ぶと学年の列が一番長くなるのだ。体育館も柔道場もつぶして教室。1クラス60人のスシヅメ。競争も団結も他人には負けない。

長高から早稲田大学、大学から北越銀行、それも人事畑、支店長、君はまるで超特急の新幹線列車のように50年を走っていった。他人は出世街道驀進と思うが、自分や同級生はそうは思っていない。おい無理しているんじゃないか。団塊世代は真面目で一直線、人も好くおだてにのる。駄目な上司をよく支えて自分で責任をとる。

私は、大学も休んだり、就職も無駄にしたり、回り道もしたから多少ひねくれて、岩淵君ほど真面目でない。文学も好きだし、人生の挫折も感じたから、岩淵君ほど根性がよくない。しかし、お坊さんが言っていたように、人生の完結って何だ。30才で死のうが、80才で死のうが、死ねばそれはもう完結ではないか。何でそんなに急いだのだよ。

企業戦士は悲しい。さんざん働かされて、家族を残したまま戦死するなんて。目をつぶれば団塊世代の戦死者の死屍累々の姿を見てしまう。

おい、戦友、ゆっくり休もうじゃないか。妻や子供と遊ぼうや。もう、僕らもずいぶん働いたはずだ。それでも景気が悪かったり、政治が悪かったり、社会が荒むのは、僕らのせいではない。上司や政治家や教育者の責任だ。妻や子供のために遊ぼうや。

岩淵君、ゆっくり休め。僕らの世代は何かにとりつかれたように走ってきた。目標を与えられて、達成のために頑張ってきた。土日を十分に休んだり、有給休暇をを十分に取ったか?

君の笑顔はすばらしい。酒をくみかわしながら、あぶなかしい僕に説教してくれた君の笑顔を忘れない。ゆっくり休んでいて、僕らが行くのを待っていてくれ。

      

 

           「岩淵さん、私を待っていてくださいね」

 

                この写真は不許可で掲載しています


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