土手下城の怪しい人々
おっと、のっけから怪しい写真ですネェ。
なんといってもこの家族、パパラギ探険隊の中でももっとも怪しい人として知られるユース氏の家族ですからネェ。怪しくても不思議はないのですよ。こんなあほらしいことを喜んでするのですから、小僧君はともかく、あけみちゃんも洗脳されてしまったのですねぇ。
2002年4月、ユース氏は信濃川の土手下のどんずまり、どちらかというと国土交通省所有の土手ののり面を削り取ったようなススキの原を伐採し、侵入路を含めた土地の所有権を宣言し、怪しい隠れ家のような城を築城しました。
「来い来い」と誘うので、いったい何を見せびらかされるのだろうと身構えつつ、エーヤは4月20日の夜、この城を表敬訪問しました。
玄関でエーヤを出迎えたのは、沖縄のシーサーでした。番犬でしょうか。まぁ、沖縄かぶれのユース氏としてはごくごく自然ななりゆきでしょう。
でもとなりの花はなんなのでしょう。春の菊です。葬式でもあったのでしょうか。だとすれば、不思議はないのですが。
玄関を上がると、住宅展のように、来訪者名簿が渡されました。50音順にページが割り振られてありました。エーヤが記帳すると、ユース氏は嬉しそうに胸に抱えて、金庫にしまっています。いきなりの展開です。あとでダイレクトメールが送られてくるのでしょうか。
キッチンには10歳もの年の差を乗り越えて、だまされたあけみちゃんが、10年にわたるキッチン戦争に耐えて、ついに念願の自分の城を手にし、真新しい包丁を片手に会心の笑みです。
あのこだわりのユース氏を育て、自らもこだわりをふんだんに発揮してきたお母さんですから、抵抗するなどもってのほか。アリが象に挑むようなものです。しかし、彼女は耐えきりました。戦わずにして勝つ。どこかの兵法の本に書いてあるような戦略の勝利でしょうか。
この家自体は、住友林業が建ててくれたもので、重厚感ある木がこだわりを表していることを除けば、決して怪しいものではありません。誰が見てもいい家でした。
しかし、怪しいものを探せば、いくらでも見つかります。なんといっても、ユース氏は見られたくてしょうがないのですから。
2回の天井の取っ手を引くと、秘密の階段が現れます。これだけで十分に怪しいのですが、氏のことですから、あたりまえのものが入っているはずはありません。
階段の上は屋根裏の収納スペースです。でもこの家の場合、ここは秘密の小部屋という感じです。
どこぞの宗教の尊師さんなら、ここでメロンを抱えて息を潜めているのでしょうが、ここは缶ビールのコレクションが並んでいました。
その数200とも300とも言われています。もちろん氏がそんなあいまいなことを言うはずないのですが、写真に写っている箱の数からみると、氏の主張する数よりも多いようです。すべてが違う缶なんだそうですが、数えてみてください。
これから、夜な夜なロウソク片手に、缶をなでまわすのでしょうねぇ。
こちらは玄関わきの納戸に並んでいた箱です。これは氏のスニーカーコレクションです。エーヤにはさっぱりわかりませんが、この箱も夜な夜ななでまわしているに違いありません。
キッチンの片隅で、氏は突然に「ここは何もありません」と慌てて体で隠しました。「何もない」と言われて「はい」と言ったら税務署は仕事になりません。「何もない」は「あります」と同義です。もちろんこの場合は、「見てね」という意味です。でも公開はしないで欲しいと泣いてすがるのです。
ここはワインのストッカーでした。エーヤにワインは、豚に真珠みたいなもので何も関心ありませんが、相当な逸品があるに違いありません。チラリと覗いたラベルは1976と書いてありました。
ここが自慢の月見台。春の夜風に吹かれながら、ここで月を愛でつつ「越州」を飲りたいですねぇ、と盛んに誘惑してくれます。そうれすねぇ、イイデスネェ。
暗くて見えませんが、一面に借景の土手が広がり、その上を月が散歩します。この日の満月はシュミレーションです。悪しからず。
沖縄で物色してきた杯だそうです。この小さな杯に泡盛を注いで、スパッ、スパッ、と飲みましょう、と如何にも嬉しそうですネェ。
というわけで、パパラギ探険隊首脳会議をやりましょう。ということでした。
うーむ、イイデスネェ、泡盛もイイデスネェ。越州もイイデスネェ。フフフ、赤ワインだっておだてりゃ出るはずだ。