「経済ッて,経済学ってなんなのさ」

 

まず、ふだんの会話から、経済という言葉をひろってみます。

「これって経済的でしょ」

この場合には、安上がり、無駄がないという意味で使われているようです。

「うちの経済はママが握っているよ」

この場合には、家計を意味しています。

「この国の経済は・・・」

などと言う時には、人間の生活に必要な財,サービスを生産,配分,消費するしくみといったところでしょうか。このへんから、わけがわからなくなるわけです。

しかしその語源をみると、経世済民という言葉にぶつかります。漢字を読めば想像できるように、これはまさしく政治です。あの竹下派の経世会はここからくるわけでです。

このように、経済という言葉はもともと限りなく政治に近いものであり、その点で、いくつかの大学では、政治経済学部をもうけているのです。

緑本を開くと、「佐藤さん,エコノミクスって、もともとはどういう意味かわかりますか」という、平ちゃんの言葉で始まります。

佐藤雅彦は、「僕は経済学に対してあまりいい印象を持っていなかった。それは、株や投資といったものに伴う、怪しげな雰囲気や、安易な金儲けをよしとする傾向を作り出すことに、経済学が加担しているように思われたからだ」

と思っていましたが、平ちゃんの

「エコノミクスというのは、ギリシャ語のオイコノミクス、共同体のあり方から来ているんです」という言葉に打たれてしまいました。

この話からもわかるように、経済学というのは本来、限りなく広い意味をもち、政治も法律も経営も社会学も含む、いわば社会科学の殿堂ともいうべき志の高いものなのです。

しかし、現実には評価が高くありません。むしろ、経済学は役に立たない、という言葉のほうが一般的です。この場合、専門的には、不況や失業といった問題や、戦争などを回避できない、という意味で言われているわけですが、庶民的には、経済学では資格がとれない、覚えても仕事に関係しない、という意味で言うようです。

確かに経済学の進展は遅々とし、理想社会の到来ははるかに遠いのですが、それでも経済学の生まれた十八世紀と比べれば,はるかに貧困の世界は減少しているはずです。

さて、経済学の進展についてはあとにまわすとして、ここでもう一度、経済という言葉を探ってみます。

「長岡祭りの経済効果は十一億円」

何年か前の新聞記事の見出しです。祭りなんか金の無駄遣いだからやめろ、という批判に対して、経済効果は大きいのだからやらなければならないというわけです。

祭りになると、寄付をとられる、お客が来て接待したら五万円もかかって大損した、というように、楽しめる分お金の面では損をするのが普通です。ところがこの損というのは、家計の立場から見ているわけで、そのお金は料理屋さんや平成堂さんなどに支払われるわけです。つまり、福沢さんを燃やさない限り、ある家計の支出は別の家計や会社の収入になるわけです。

これが経済のややこしいところです。経済効果の十一億円と言うのは、料理屋さん,平成堂さんの収入、魚屋さん,八百屋さん、醤油屋さん、ガス屋さん、ガソリン屋さん、それからJRとかタクシー会社といったさまざまな企業の収入をあわせた金額なのです。専門的に言えば、家計から企業への所得の移転があったというわけです。

それでも納得できないかもしれません。損しているのにいいことだなんて、底値買いのお母さんが許さないかもしれません。でも個人にとっては、貯金することが正しいことでも、社会全体でみると大不況になってしまいます。政府はあわてます。こういうことは経済学ではよくあることで、「合成のごびゅう」といいます。これが経済学を複雑にしています。    

ちなみに日本の平均消費性向所得のうち支出した割合、残りは貯蓄は、通常86パーセント程度、不況の現在は70パーセント程度ともいわれています。みんながお金を使わないと大変なことになるわけです。

このことからわかるように、経済学では、個々の経済主体からみる方法と、社会全体からみる方法の二つが存在し、両者は必ずしも一致しないというやっかいなことになってしまいます。

そこで、近代経済学では前者をミクロ経済学、後者をマクロ経済学と分類しています。他にマルクス経済学という分野もありますが、こちらは法政大学で最近勉強中のユースの田村氏にお任せしましょう。なお、ミクロ経済学は経済原論、マクロ経済学は経済政策論ともいいます。この方が内容がわかりやすいかも知れません。

というところで、入り口に到着しました。次回からは、できるだけ長岡にある話題を拾いながら、ミクロとマクロの理論へと導入したいと思います。

とりあえずは次回は、底値買いの立場から、物の価格について検討したいと思います。

物が安くなることはいいことなのかどうか。これは現在の日本のおかれている構造改革の問題につながるテーマです。

 


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