円安はデフレを解決するか

 

ちまたでも、デフレ談義がさかんになってきました。  

デフレは継続的な物価の下落と定義されていますが、現在の場合、輸入物 価の下落と不況による物価の下落という2つの下落があります。前者は良い 下落で、後者は悪い下落であるという説があることは、以前お話しました。 しかし、紛れもなく前者が後者を誘発することは明らかです。  

さて、ということになると、デフレからの脱却には、輸入価格の上昇という手 が考えられるわけです。輸入価格の上昇とは、紛れもなく為替の変動、すな わち円安です。  円安になると、輸入価格は上昇し、輸出価格は下落します。その結果、輸入品と競合する製品をつくる企業は有利になり、輸出企業は輸出先国での 価格下落により、輸出数量が増加して収益が改善します。これは輸出入と も実に都合がいいわけです。ですから、円安になればデフレが改善する可 能性が出てくるわけです。   ならば円安になるかどうか。

もちろん最近は円安傾向ですが、日本の構造改革に対する失望売りと言 われています。しかし、この程度120円前半程度の円安ではなく、180円 くらいを予想する向きもあります。確かに180円程度になれば、たいへん有 利です。問題はなるかどうかです。  

そもそも為替のレートを政府が支配することはできません。短期的には介入 して誘導することは出来ますが、国際協調でもしない限り、長期的には無理 です。  

もし、今円安になると日本の企業は助かりますが、アメリカの企業は困ります。 ですから円安政策をとることは「不況の輸出」とか「近隣窮乏化政策」とよばれ、 やはり禁じ手なのです。  

まして、アメリカもバブルが崩壊して危機が訪れつつありますから、なおさら です。  

では、いったい為替レートはどうやって決まるのでしょう。  

これは、個人的に外貨預金をすることを考えると理解しやすくなります。つまり、外国の預金金利と国内預金金利を比べて、外国が高ければ外貨預金をするでしょう。これはドルを買うことであり、ドル高円安の要因です。  

また外国通貨を買うならば、安定した国の通貨を選ぶでしょう。途中で暴落 したらかなわないからです。ですから、安定した国の通貨は高くなります。  

世界中のマネーが金利差を求めて国際的に移動するのが、為替変動の最 大要因なのです。現在は、アメリカも急速に金利を下げていますから、その 意味では円高要因になっているのです。もっと正確に言えば、他の通貨に対 して、円も安く、ドルも安くなる状態ですが、円ドル関係ではどちらかわからな いのです。  

よく誤解している人がいるのですが、変動相場では国際収支が均衡すると 思いがちですが、理論的にそんなことはありえません。通貨の人気度と金利 差によって為替が決定し、それをもとに貿易が行われるのです。決して均衡 するわけではないのです。  

まあ、為替の話はわかりにくいと思いますが、円安になると国内景気にはブ ラスでも、海外旅行は高くなりますから、それがいやだという人も多いのか もしれませんね。

そもそも、通貨が高いということは国力の高さを表しますから、名門やエリートは大きい顔はできるけれど、維持するのは大変だということでしょう。名をとるか実をとるかということですね。


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