予想される最悪のシナリオ
このところ、デフレ、量的緩和、バブルの再検証、外国為替、と話をつないで来ました。そして、そこでは「目先警戒、長期楽観」というセオリーにのって書いてきました。ならば、最悪のシナリオというのも検討しておきましょう。
まず、デフレでの最悪のシナリオはデフレスパイラルです。ここから抜け出せないとどうなるか。
昭和の始めを検証すれば、恐慌は人々の心理に国粋主義を芽生えさせます。
そして、ろくな仕事がないのですから、軍隊に就職するのが一番ということになりました。一方、仕事を求めて、北海道へ、満州へ、南米へ、と移住を始めました。現地では、現地人とのトラブルが発生しますから、日本の権益を守るために、軍隊の派遣を要請します。こうして軍隊は力をつけていったのです。
あとは満州事変から始まる戦争の10年の時代でした。現代は平和ボケしていますから、到底想像できませんが、当時だってデフレ不況は10年も続き、どうにもならないところから国粋主義へとつながっていったのです。
また、日本だけが不況ではこうな長引かないわけですが、恐ろしいことにアメリカの株が暴落し、アメリカも急速に不況へと突入していきそうです。
さらに、絶妙のタイミングで登場したブッシュ政権は、常に強いアメリカをめる共和党政権であり、冷戦終結とクリントン民主党政権によって不況の中にあった軍需産業の期待を一身に集めての登場でした。そして、間髪をいれず、フセインたたきを始めました。中国では目覚めた大国の牽制に余念がありません。
こう考えていくと、平和ボケだからと安穏としていられるかどうか、一抹の不安が残ります
次に日銀の量的緩和の結果については、ハイパーインフレの可能性を指摘しておきました。
残る財政政策の最悪のシナリオは、国債の暴落です。
国債の暴落とは何か、分かりにくいので説明しておきます。国債などの債権は、例えば1億円の1年債という形で売り出され、金融機関が入札します。この国債が欲しければ、高値9999万円で、それほど欲しくなければ9000万円で入札するとします。
この場合、満期まで持てば1億円が保証されているわけですから、差額が利子となります。9999万円で買えば1万円が利子となり利回りは0.01パーセントになりますし、9000万円ならば1000万円10パーセントとなるわけです。
人気のある国債は高値で低金利、不人気は安値で高金利となるわけです。
国債を安く買えれば高金利が保証されるわけですから、通常は落札できませんが、この国債が償還されるかどうか不安な状態になると、高値では入札しなくなりますから、安値で落札されます。これは金利の高騰を意味します。
このように、債券価格の暴落と金利の暴騰は同じことになります。
ちなみに現在は、10年もので1.5パーセントという低金利です。これは高値で買われている事で、債権バブル状態であるとも言われます。しかし、やや上昇気味でもあるのです。金融機関によると、買いたくないけど他に買うものがないから、恐る恐る人の顔色をうかがいながら買っているのだそうです。
ですから、人が入札をやめれば自分もやめようとしているのです。これは、国債の暴落を意味します。国債暴落、買い手なしという状態は、金利の暴騰、政府の資金繰り破綻、債務者破産、経済破局ということでしょう。
こんな恐ろしい状態が、もしかするとすぐそこに来ているのかも知れません。政府は国債は安定的に消化されているとしていますが、ただ同然の金を日銀から借りられる金融機関が、貸出先に苦慮して買っているということと、郵便貯金が集まって困り、国債を買っているにすぎないのです。それは、いまのところ政府は国内金融機関や郵政省には信用されているということに過ぎません。
さて、昨日のNHKスペシャルで、青森県大鰐町の第三セクター破産と財政危機を取り上げていました。町が債務保証をしているので、税収8億の町が、80億の債務を年に3億ずつ、30年間払いつづけなければならないというものです。結局議会がノーといい、町は政策投資銀行に借金踏み倒しをお願いするしかないことになりました。
銀行がどう対応するか。破産宣告をかければ日本発の自治体の破産になるでしょうし、前例ができると後も続々と続きそうです。人の不幸を楽しむようですが、目が離せません。
信用という言葉の重さとイイカゲンさを、味わうことの多い今日この頃です。