クルーグマン教授をご存知ですか

皆さんはクルーグマン教授をご存知ですか。ここ2,3年新聞広告などで、よく見かける名前です。アメリカの経済学者の本が、なぜ日本で売れているのでしょう。もちろん、あの緑本や、みんなの経済学のように、一般向けに書かれているからではありますが。

1997年秋、東南アジアを経済ショックが襲いました。通貨危機です。韓国のウォンやタイのバーツが急落したのはご存知でしょう。それまでは、東南アジア諸国は高度成長を続け、日の出の勢いがあったのです。しかし、国債投機資本が急に売りをかけたために暴落することになってしまいました。国際投機資本というのは、この場合ヘッジファンドだといわれています。

ところで、参考までに付け加えておきますが、すっかり悪者になった感のある投機資本ですが、本当に悪なのでしょうか。これについては、アメリカ経済学会の重鎮ミルトン・フリードマンは、投機は市場を安定させると主張しています。ー考えてみて下さい。相場が安い時に買いに入ることは自然のことですが、これは相場の引き上げ効果があります。高い時には売るのが当然ですが、引き下げ要因になります。ですから、一般的に投機は相場を安定させるのです。

ところで、この通貨危機を事前に予告したのが、クルーグマンだったのです。彼は東南アジア諸国の経済成長の要因を分析し、技術進歩率が著しく低いことを指摘しました。一般に経済成長は、資本の増加と労働力の増加、それに技術進歩率の組み合わせで説明されますが、この技術進歩率の低さは、かつてのソビエトと同じだと指摘したのです。ですから、この経済成長はまやかしの成長だと結論したのです。この結論にアジア諸国激怒したわけですが、まもなく現実のものとなったわけです。

こうして世界の経済学会のスターになったクルーグマンですが、実は調整インフレの最大の主張者でもあるのです。彼の主張によると、日銀が今後10年間2パーセントの物価上昇を続けると宣言して、金融緩和することによって、国民にインフレ心理が生まれ、それが消費の先取りを促して、実際に2パーセントのインフレになるというものです。そして、市場経済はインフレにならないと機能しないという原則がありますから、八方丸く治まるというわけです。しかし、現在の学会では、ハイパーインフレを招くとの危険から、異端とされているというのは、前回指摘したとおりです。

以前の強制講義の中で、今の日銀の政策も実質的に調整インフレだと書きました。もちろん日銀は否定しているのですが、デフレ状態から0パーセントを目指すのですから、内容はかなり似ているのです。ただ、インフレ目標を掲げていないところが、日銀の逃げでもあるのです。と同時に効果は、限定的かも知れません。

ともかく、量的緩和でジャブジャブ溢れるマネーで国債を買いつづけるのですから、なんだかチビクロサンボのお話の中の虎のバウムクーヘンのようでもあるわけです。

インフレになればすべて解決すると考える人たちが、クルーグマンを担ぎ出しているのが手に取るようにわかりますね。

 


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