2月14日はインフレ記念日になるか

おなじみマクドナルド・ハンバーガーの藤田田社長が、2月14日はインフレ記念日になると宣言していました。

藤田社長というのは、カリスマ性があるというか、ベンチャーとしてはもう20年以上のキャリアがあるにもかかわらず、あいかわらず攻撃的で、大胆な発言をする人です。

ちなみに私は学生時代に、外食産業の取材のためにマクドナルドを訪ね、社長ではありませんが、「うちに来いよ」と言われたことがあります。もちろん、まさかと思ったものです。まだ外食産業を目ざすという学生は少なかったものです。

もっとも私の当時の認識はことごとく裏目に出でいるようで、いくつか選んだ企業の一つが、雪印であり、サッポロだったのですよ。先のことはわからないものです。

ついでながら、正月の新聞に、年末の為替レートを予想する財界人たちの一覧表が出ていましたが、一人の例外もなく、130円から140円を予想していました。この時のレートは125円くらいだったと思いますから、10パーセント程度の円安を予想していたということです。

私はその時、160円程度、間違えば200円もありうると予想していましたので、予想外というか、慎重な発言というか、日和見だなぁと思いました。極端な予想を発表はできないという役所のような体質です。

その点では、藤田社長は極端です。デフレ宣言をして、平日半額ハンバーガーを売り出し、外食産業に激安旋風を巻き起こしたのも社長です。

ナンバー1が価格破壊を仕掛けるというのは、それまでの日本では考えられませんでした。ナンバー2が仕掛けて、ナンバー1は利益を確保するというのが、通常のスタイルでした。

しかし今度は、インフレの宣言なのですから、ナンバー1が宣言するのは当然でしょう。

さて、藤田社長の説ではこうなります。日本経済はデフレでどうにもならなくなっています。いわゆる3月危機回避に向けて、政府はウルトラCの政策を打たないと、日本売りは決定的になるでしょう。その政策は、日銀にとっては禁断の政策、いうなれば投げ出して、どうにでもなれという政策です。具体的に一番代表的なものが、日銀による国債引受と、インフレターゲット設定です。

国債の引き受けは民間金融機関が主になっていますが、これが不思議なことになっていました。銀行としては、市中から集めた金の貸出先がなく、金利が稼げないことから、やむなく超高い、言い換えれば超低金利の国債を買っていました。国は大丈夫だろうというわけです。

ところが、さすがに体力低下で買い渋りの様子が見えてきました。長期金利1.4パーセントが1.5パーセントになったという記事が並ぶようになりました。そのため住宅金融公庫も利上げを発表しています。長期金利は上昇傾向がはっきりしてきたのです。

ここで日銀が国債を引き受けるということは、日銀券を無尽蔵に発行するようなものです。需給バランスからいって、日銀券は暴落に向うでしょう。これはインフレです。それも派手な。今までも量的緩和策はとっていましたが、枠を決めてコントロールしていましたが、今度はコントロール不能になると予想されるため、日銀にとっては禁断の政策なのです。

加えて、為替レートの円安傾向は、G7でも容認され、輸出主導型の景気回復を、各国が容認したということです。ですから、円安はさらに進むでしょう。マクドナルドは輸入食材を、105円の為替レート計算で調達していましたが、すでに20パーセント以上値上がりしている計算になります。今までは、体力勝負でそれを消化した上で、さらに値下げしていたわけですが、円安傾向が続くとなれば、それも不可能。採算のとれる価格設定に切り替えて、2月14日から新メニューを投入するということです。

ナンバー1の値上げは業界には朗報です。外食産業の勝ち組である全国チェーンはどこも輸入食材にたよっていますから、いっせいに値上げ含みになるでしょう。

政府の実質的値上げ策も目白押しです。価格支配権をもつ政府、勝ち組企業が値上げを始めれば、市場には値上げが折り込まれるでしょう。いらないものはデフレ、必要なもの、欲しい物はインフレという状態がしばらく続くと考えられます。

これをならして、1パーセント程度の成長をめざすのですが、うまくいくかどうかは誰にもわかりません。わからないが、責任はとれないが、やるしくないという段階にきているということでしょう。

こうして、後で振り返ってみたら、2月14日のマクドナルド値上げがきっかけだったということになる、というのが藤田社長の宣言です。

さて、どうなりますか。私が予想をしてもほとんどはずれるのですから意味ありませんが、少なくとも高金利と円安ということになれば、有利子負債の多い企業は淘汰され、同業の財務内容のよい企業は高笑いし、株価も上昇する。輸出産業は少し採算が向上するが、内需は倒産と輸入物価の上昇で低迷する、というくらいは言ってもいいでしょう。

しかしとにかくインフレの流れが定着すれば、先高を予想して、物が動き始めます。今の消費者については、買い急ぎをするかどうかはなはだ不明ですが、企業は即座に反応します。だぶついていた物が、ある日忽然と姿を消し、ないかないかと物色されるというのは今までも何度も経験したことです。資金に余裕のある企業は、寝かせて値上がり益を取れるからです。

こうして、出口のない不況から、生活水準は落ちても、先に対する期待のもてる時代に移行できれば、ますまずなんですけどねぇ。

 


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