英断か愚行か

日銀の株買い取り政策を問う

7月のマクドナルト値下げ以来ですが、やはり予想できない事態は起きるものです。

イラクの査察受け入れと小泉首相訪朝です。そして、ブッシュ・ドクトリンの発表。もはや世界は圧倒的軍備力をもつアメリカの意のままに動き始めました。しかしこれはとりもなおさず、不満の位置エネルギーが増大することを意味します。ますます明日はわからない、というところでしょう。

それはともかく、日銀が銀行保有株式の直接買い取りを宣言しました。

言うまでもなく、これは禁じ手といわれる奴です。効果はあるかも知れないが、副作用も大きいということで、禁止されているのです。

もちろん株安による金融機関の9月危機、来年3月のペイオフ危機対策の回避のためですが、無秩序な政策は国債の信用を失うということで、さっそく長期金利が上昇しています。

マスコミは一斉にエコノミストを総動員して、英断か愚行かを論じています。両説とももっともなわけで、簡単に結論づけることはもちろんできません。なにしろ日銀にとっては、そんな反応は百も承知なのですから。

もう少し冷静な見方をする向きは、日銀が現在の銀行の内容を危機的と判断したとしています。政府や金融庁は危機的でないと主張していますが、銀行の親分が危機的と判断したのです。これはやはり重いでしょう。

この政策に対して、我らが平ちゃんは、「理解できない」とコメントしています。平ちゃんはデフレ対策の総動員を主張していますから、危機感としては変わらないと思いますが、やはり銀行だけを救済するという要素が強いということは、それぞれの縄張り争いの感がしないわけではないでしょう。

確かに銀行が持ち合い株を市場で売ろうとすれば、相場が下がり、銀行の含み損は拡大します。それは銀行危機、ひいては金融危機につながります。

しかし、特定の株を市場外で買い取るとなれば、おそらく不良債権化した株が日銀に集まることになるでしょう。それは不良債権処理の一環でもあるのですが、日銀の買い取り株は紙くずになるでしょう。4兆円程度で日銀がどうなるということもないでしょうが、税金を使って特定の銀行を救済するという非難は免れないでしょう。

要はモラルハザードが起きるのではないか、ということです。やはり経営責任問題を解決した上でなければ問題でしょう。それができるのか、ということです。どうも日本には革命的改革はなじまないようであり、先輩の責任追及は困難なようです。いわゆる「ムラ意識」という奴です。

ともかく月末までは目が離せません。もちろん政府のデフレ対策も、内閣改造もです。平ちゃんは果たして残るのでしょうか。政治家の雑音を嫌う小泉首相は、絶対の信頼を置いているようですが、やはり政治家を動かす力はないようです。

政治家に強い人はやはり雑音の人、「情」の人です。対するは「理」の人。情か理かの選択です。

小泉訪朝問題も、とにかく正常化にむけて前進すべきであるという「理」が80パーセントの支持を集めた一方で、拉致被害の解決なくして正常化する必要なしとする「情」が60パーセントの支持を集めています。そしてマスコミはひたすら「情」に訴えています。

ともかく、この政策でデフレが解消するということは考えられません。やはり国民にとって最も大きな課題である、土地デフレが底入れしたという心理の醸成が一番必要だろうと思います。

その点では、先日基準地価の発表がありましたが、商業地2ケタ、住宅地1ケタのマイナスではどうにもなりません。

そもそもこの基準地価は7月1日現在の地価を県が発表するものですが、県は国土交通省に逆らうことはなく、1月1日の公示地価を追認するものです。そして公示地価は昨年の動向を参考にして決めます。つまり、9月に発表される地価は、昨年の結果なのです。

さらに、長岡市の最高価格は、厚生会館脇のカトルビルで、約20パーセント弱下がって、坪180万円位でした。しかし実際の取引は周辺で40万前後しか成立していないようです。にもかかわらず、不動産取得税や登録免許税は180万円を基準に算定されます。これではおよそ買えません。取引が成立しなければ、ますます激安競売価格のみが横行することになり、来年の値下がりを保証します。

つまりこの国の制度は、インフレの時にはインフレが、デフレの時はデフレが継続するように出来ているのです。この流れを逆転するにもよほどのことがなければなりません。もうすでに銀行の担保評価は、実勢価格に近づいているのですから、官製価格も早くリアルタイムに対応して、底値感を形成してもらいたいものです。

先日は長岡ニュータウンのショッピングセンターが、ひらせいホームセンターによって買われましたが、其の価格は約3億円でした。最初の競売価格は11億円でしたから、早く安くなれば取引が成立して、新しいビジネスがスタートするのです。公的価格が実勢に対応することは、変化と再生を早くする最低条件なのです。

財政の中立を財務省が主張すればするほど、デフレが進展して財政難になります。ここはやはり思い切った減税と構造改革をすすめて、景気回復後に財政再建を目指すしかないでしょう。おっとこれは平ちゃんの主張でした。


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