金融の量的緩和とは


前々会のデフレの通信の続きです。

日銀が量的緩和に踏み切ったという報道はご存知だと思います。しかしこれが何を意味するのかについては、あまり知られていません。

以前から、この不況脱出のためには、調整インフレをめざせとか、インフレターゲティング論とかいう主張をする専門家もいました。量的緩和というのは、正しく調整インフレ政策です。インフレ率0パーセントになるまでは、マネーを無尽蔵に出しつづけるのですから。

私の恩師、岩田教授はその代表です。(お断りしておきますが、私の恩師というのは大勢います。本を読んだり話を聞いて得るところがあった場合に、即弟子入り宣言をしてしまうに過ぎません)。

しかし、それに対し日銀は全面否定しています。そもそも日銀理論というのはこうです。喉の渇いた馬を泉のそばに連れて行くことはできる。しかし、水を飲むのは馬だ。馬が飲む気にならねば何もならない。いくらマネーをジャブジャブ印刷しても、借り手がいなければどうにもならない。というものです。「金融政策というのは、景気引き締めには効果的だが、景気対策としては主役にはなれない」というのが主張です。それよりも、中央銀行の役割はインフレの防止そのものだというのです。

さて、両者の対決は、今まで岩田教授の攻めを日銀が二枚腰で頑張ってきたが、ここで行司役の政府がデフレ宣言をしたことにより、日銀の足が出たと判定され、岩田教授に軍配が上がったというところでしょうか。

しかし問題はこれからです。日銀が言うように、「調整インフレを目指しても、成功する保証はなく、ハイパーインフレになる恐れがある」からです。ハイパーインフレとは、とめどないインフレです。マネーの価値が紙くず同然になるのです。今喜んでいる人たちが嘆くことになります。

ここで問題になるのは、景気判断と同じく、データの速報値の信頼性がないことでしょう。経済は日々動いていますが、データは集計されるのに数ヶ月かかり、しかも多くの場合、1年後くらいに修正される傾向があるからです。そのために、対策は後手に後手にとなってしまうのです。

さて、それでは予想されるシナリオはどんなものでしょう。

シナリオ1

岩田教授の主張するように、緩やかなインフレになり、経済は回復する。但し、構造改革先送りの可能性もある。自民党の狙いはここにある。

シナリオ2

ジャブジャブのマネーが行き場を求めてさまよい、バブルが発生する。前回と同じとは限らないが、やはり確かな価値を求めようとすると、株や土地などが暴騰する可能性が大きい。それが相当異常だと言われるまでは続き、その資産効果で初めて景気回復にむかう。

シナリオ3

ある日気が付くとインフレが始まり、とめどなく続く。例えば魚沼コシヒカリが年明けから暴騰し3割も上がっている。これは4月からの規制の影響だが、それまでの低迷から考えると不思議な話だ。やはり確かな価値を求めてマネーはさまようと考えていいだろう。そして、やがてはすべてのものが上がり始める。ハイパーインフレの地獄の始まりである。

私はシナリオ2あたりの可能性が大きいように思います。そこで、次回はまたまたバブルの再検証といきましょう。



戻る