ユース氏から参議院補選の総括を書けと指示されたので、あまりに生々しく現実的で仙人らしからぬとは思いつつ、それなりに論じてみたいと思う。 (題目はカムフラージュを目的としている)
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参議院新潟補選が終わった。結果は世論調査のとおり黒岩氏の圧勝であった。
黒岩氏の人となりについては無言の知るところではないが、黒岩氏35歳と塚田氏38歳という30台の若手の戦いであったことは、結果にかかわらず素晴らしい成果だったと考えている。もっとも無言は40代であるから、一抹の寂しさもあるのだが。
ともかく時代は70台から60台へという順番待ちどおりではいかなくなったことを、象徴する選挙だったということが最大の成果だと断定していいだろう。
順風満帆の世の中ならば、波風立てることなく順送りというのも、決して間違っているとはいえない。しかし、今日のように歴史的転換期には、これからの半世紀をどう展望してどう構築するかということが問題になる。責任をもってその問題に取り組めるのは、やはり半世紀を生きる世代である。そんなことからも、有意義な選挙だったといえるのではないか。
それと誰の目にも明らかなのは、自民党の無能ぶりである。もはや自民党はかつての恐竜のように「総身に知恵がまわりかね」ている状態と断言していいだろう。滅びるのは時間の問題であろう。
とは言っても、危機と言われ、日本新党に政権を奪われてから、はや10年。その間ただひたすらに、イデオロギーや政策ではなく、政権与党であることにこだわり、金と権力につがみついてきたわけであるから、まだまだ二枚腰、三枚腰で頑張るのかもしれない。
そもそも前々回の参議院選から迷走していたことを思い出さなければなるまい。あの時は真島氏が当選する予定だったのだが、真紀子氏いやここでは怪獣マキゴンと呼ばせてもらうが、マキゴンのごり押しで直紀氏が立候補。自民党公認をめぐって党とマキゴンのバトルが始まったのである。
むろんマキゴンのごり押しが原因なのだが、真島氏の運動は旦那様選挙のために盛り上がらず、まさかの落選となったのである。この時すでに自民党の選挙は、かつての土建屋フル稼働選挙が機能しなくなっていたようである。
続いての真島氏の雪辱選。自民党の義理と人情に厚い任侠道のような体質は、屈辱の真島氏を単独公認と決めた。ところが告示されてみると、にこやかな真島氏の顔はポスターだけで、げっそりとやせこけた顔での政見放送となったのである。このやせ方がただごとでないことは誰の目にも明らかだった。しかし自民党は義理と人情を貫き通したということであろう。
幸い小泉ブームに沸いた選挙は、小泉総理が道路公団廃止を訴える中で、道路は守るという一点で土建屋をまとめ上げるというねじれた構造ではあったが、やはり政策よりは政権という体質そのままに、真島氏を国会に送り込むことに成功したのである。
ところが真島氏は一度も登院することなく、他界してしまうのである。そして余命いくばくもない真島氏を公認した党は、マキゴンの強烈な批判をうけることになった。
その流れの中での今回の補選である。党本部は県連に判断をゆだね、県連は順番待ちの論理でベテランの高橋氏を公認した。まさしく幕末の評定会議そのままに思考が停止している状態であった。
ところが世論調査で敗北濃厚となると、候補者差し替えという前代未聞の愚挙に出た。この時県連会長の栗ちゃんは、マキゴンには逆らえないと明言しているから、マキゴンの批判に党本部が動かされたのだろう。
差し替え候補は黒岩氏に対抗して若さの塚田氏となった。この決定はマキゴンの意思がはたらいたのだろうか。謎である。結局はマキゴンは応援せずに、塚田氏が苦渋をなめるのであるから、反対だったのだろうか。
ここで無言は言う。実はマキゴンにとっては今回の自民敗北は読みきった上で、塚田氏を追い落としたのではないか。
理由は定かでないが、塚田氏の父親である元県知事がなぜ汚職で引責したのか。この時どうも角さんに追い落とされたらしいのである。角さんは言うまでもなく、人使いの天才であった。ところが角さんに追われたということは角さんにとって敵だったに違いない。
マキゴンの言動、行動をみると、人を敵か家族か使用人かに分類するようであるが、その根拠は角さんのひざの上で見たり聞いたりしたことが絶対の価値観であるように思われる。そして角さんを裏切った竹下グループを絶対に許さないという姿勢である。
恐らく塚田氏はかなり嫌われていたのではないだろうか。その結果、若手の塚田氏が負け戦に担ぎ出させられるのを読んだ上で、候補者の差し替えを言い出したのではないか。
いずれにしても怪獣マキゴンは時代を見通す能力と大衆の心をつかむ抜群の才能を持ち、ひとり自民党を超越した超自民党の立場で、現人神のように振舞う鬼才である。
ただひとつ、自分のことについては全く批判の対象とはしていない。言わば人格に問題があるわけであるが、なにぶんにも超越した現人神であるから、そんなことは問題としないのである。あくまでも敵と戦うのみである。
自民党が造りあげた怪獣であり、現人神でもあるマキゴンを、思考の停止した日和見集団である自民党は追求することはできないであろう。となると、怪獣マキゴンはこれからも暴れまくるであろう。
そして、角さんを葬り去った自民党を自分の手で葬り去るに違いない。そんな鬼才を選出している越州長岡は、三たび戦火を受けることになるのかもしれない。
しかし最後に勝つのは大衆の心をつかむ人格者のはずである。
「歴史は敗者の怨念がつくりあげる」
司馬遼太郎の言葉が無言の頭からはなれないのである。
そんなことを考えながら、無言は選挙を棄権したのである。