怪しい銀行員

先日、ある田舎町で目撃したシーンである。

そこには、そのあたりのバアチャンたち3人と、年のころ40歳くらいの女性銀行員がお茶のみをしていた。

話題は、おたくの銀行は大丈夫だろうか。1000万円以上だと保証されなくなるらしいが、郵便局もいっぱいだし、どうしようか、というものだった。

農家のバアチャンたちは金持ちである。うらやましい限りである。

ところが、銀行員はニコニコしながら、バアチャンを諭している。

「あのね、おかあさん。うちの銀行がつぶれる時は、日本がつぶれる時なの。その時は郵便局もダメ。昔もあったでしょ、通帳もお金も紙切れになったことが。今はまたそうなるかもしれないのよ。日本が戦争に巻き込まれればね」

バアチャンたちはキヨトンとして聞いている。それを見て銀行員は、ますます元気に力説するのである。

「心配しないでいいの。世界が平和なら日本は大丈夫。じゃあ、世界が平和になるためには、どうしたらいいと思います? 」

「それはね、貧しい国を作らないことなのよ。だからね、お母さんたちのお金は1000万円あれば心配ないから、残りは貧しい国に援助することよ。学校を寄付してもいいわよね。米百俵の話もあるしね。お金は生かして使わなきゃ。みんなが有効に使えば、本当に世の中はよくなるんだからね」

銀行員はまくしたてた。

無言は唖然としてしまった。もちろん、考え方としては、かなり美しいことであるが。でも、銀行員がお客に言っているのだからねぇ。銀行も変わったものである。まぁ、パートかもしれないが、日本全国の銀行員がみんなでこう言ったら、世の中確かに変わるのだがなぁ、と考えながら不思議な気持ちに包まれてしまっていた。

 

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