イクラ丼を食う

山の秋は旨いものばかりである。

もちろん、キノコ、木の実、野菜など、いろいろあるのだが、やはり文句なしに豪華で、主役をとるのはサケである。

まず、図体がでかい。体長70センチもの巨大な魚が、秋になると山里にも上ってくる。まあ、ほとんどの場合、地元の漁協が捕まえてしまうのだが、それはそれで簡単に手に入れることができるということでもある。

魚体もさることながら、この時期の圧巻はなんといってもイクラである。一匹のメスで平均400グラムというところであろうか。街では醤油漬け100グラム5〜600円程度が相場らしいから、2000円はくだらない。

しかし、漁協でわけてもらうのは、一匹1000円程度である。これで、イクラをとり、チャンチャン焼きを作り、石狩鍋を作り、いやはや1人では食べきれるものではない。豪華絢爛、盆と正月がいっぺんにやってきたようなものなのだ。

さて、腹子を出したらまず、ぬるま湯に塩を加え、海の水のような塩水を作る。そして、その中で丁寧にほぐすのである。しばらく漬けておくと、腹子の皮がやわらかく融けるようになり、オレンジ色に輝く卵が、パラパラと取り出される。残った皮を丁寧に取り去り、卵だけをザルに上げる。

そして、味付けである。これはお好み次第であろうが、まず醤油をひたひたに入れる。そして、酒と味醂を醤油の半分弱程度入れる。そしてかき混ぜておいて置くだけである。

数時間すると、イクラが縮んでブヨブヨになってしまう。浸透圧の関係で、中の水分が外に浸出するのであろう。ここで、がっかりしてはいけない。これは予定の行動なのだ。

やがて翌日になると、今度は醤油を思い切り吸い込んで、イクラがふっくらと、プリプリに盛り上がってくるのだ。

こうなるともう、食べごろである。炊き立てのご飯にたっぷりと敷き詰めて、海苔などをふりかけて食べれば、もう本当に秋を満喫できるのだ。

この写真では、サケの身とアジの刺身も加えてあるが、これはたまたまである。全面イクラのみというのが、本当は圧巻である。

海苔も下にしいたのは邪道である。白いご飯がイクラのオレンジを引き立ててくれて最高なのだ。それに、いろいろ乗せていると、毎日食べなければならなくなる。いくら旨いものでも、これではウンザリである。

ところで、この時期には、山ではシイタケが大きくなる。シイタケをソティーしてみました。というのはどうだろう。

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