7. 山歩きやっとのスタート

─ 今年はどこまで挑戦できるかな? ─

◆ 季節はずれの新雪踏んで連休前の守門岳へ

桜の季節も過ぎ、真っ白だった越後の山々も徐々に雪壁がはがれるように黒ずんできた。すっかり春山に変わりつつある。近くの鋸山はすっかり青みがかってきた。2月半ばから行こう、行こうと思っていた雪山への挑戦が、何やかにやらの雑用で今年は実現できないできた。昨年夏の北アでのけが以来、山行きがまったくかなわず年が明け、少々焦りにも似た気分でいたところである。4月の最後の日曜日、ようやく実現できた。久しぶりの守門岳であった。
 予定ではこの日、職場の山仲間で粟ケ岳の予定であったのが思いがけない寒冷前線南下で前日からの荒れ模様がたたって中止に余儀なくされていたものである。当日朝になってみると天気は回復に向かってきたとの予報。折角の準備も整ったことでもあり、逃してはならないと単独行で守門に切り替えることとした。

◆ 思いがけない新雪

 遅い出発で、守門村二分に着いたのが7:30分すぎであった。村内はさすがに雪はほとんどなかったが、前夜の降雪が満開の桜の花に薄っすらと化粧を加えた風情が印象的だった。満開の桜に新雪の装いを眺めたのは初めてであった。
 今日の出発地大平農場は、さすがにこの時期でもまだまだ3〜40pの雪原であった。一本の除雪道の片側に既に3台が駐車していた。天候は曇り空。高気圧が覆ってきて昼ごろからは晴れるとの予報を信じ8時丁度にスタートした。昨日から今朝にかけて山は結構雪が降ったようだ。5〜6センチの新雪だ。樹々の枝にはかなりの雪がかかっていて触れるたびにかぶさってくる。連休前の雪は珍しい。新らしい真っ白な雪道を行くのがうれしい。
 しばらくは先発のスキーと二つの靴の踏み跡を追ってゆく。踏み跡は新雪に迷わされて栃堀から保久礼へのコースとの出会い手前の杉林の中を行きつ戻りつしている。空が暗くなって風が強よまって雪に変わってきた。突然、杉林のなかから4〜50代の夫婦連れパーテイが現れた。聞くとスキーの人と会ってこの先まで来たが、新雪で方向がわからず天候も悪くなったので撤退してきた。スキーの人は一人先に行ったとのこと。間違ったコースを修正して保久礼へ向かう。

◆ 季節外れの樹氷の中をゆ

季節外れの守門の樹氷

 保久礼の小屋に9時半に着いた。小屋の前に先発の新潟からの男性が一人着いていた。スキーの人だった。小屋は1階の出入りはまだできないが、雪がかなり消え、はだかになった感じだ。水場の清水はすでに雪の覆いはなく、楽に飲むことができた。ブナの芽吹きはまだだったが芽吹きが寸前に迫っている感じだった。何年か前、やっぱり単独だった時誰かが掘り出した清水の口から2mも降りて飲もうとして怖い思いをしたことを思い出した。あの時小屋は屋根の庇まで雪で覆われ、2階から漸く出入りできるような状態だった。3月の早いころだったように思う。
 男性をあとにしてひとり先に出発する。トップになってまっさらな全く汚れのない新雪に踏み跡つける気分が何ともいえない。新雪も20pくらい。カンジキなしで支障はない。天気も回復してきた。40分ほどでキビタキの小屋が見えてくる。屋根はすっかり雪から出ていて、入り口の雪が除雪されており出入りは可能だ。感心な人がいるものだ。このあと新潟のスキーの若者が一声かけて追い越していった。
 キビタキ小屋からしばらく行った上はブナ林から抜け、眺望が効いてくる。周りの樹木が昨夜の雪氷で樹氷となって見事だ。風は強く冷たいが、段々と晴れ間が広がってきて遠くの眺望が効いてきた。

◆ 8合目、やむなくカンジキ着用して山頂へ

守門中腹から魚沼三山方向

 8合目と思われるあたりから新雪が深くなった。後ろから続いていたスキーの2人組が難なく追い越して行った。こちらはスキーなし。先発のスキーの踏み跡をつけていても、一歩一歩が20pほどももぐって着地が定まらず齢60過ぎにはかなりきつい。キビタキ小屋までとは新雪の量が相当違うようだ。寒さと冷たいめをする作業の労力をいとんで着用をがまんしていたが、ついにかんじきを使うこととした。途端に足運びが楽になった。着用は成功だった。
 後は難なく一気に大岳山頂に立つことができた。午前11時30分。3人の先陣が休んでいた。山頂の雪は、釣鐘の柱、巣守神社の石塔が完全に露れていた。しかし、遠望する青雲、袴岳の山頂の雪庇はまだまだ厚く堅そうだ。天気は完全に回復してきた。先陣の2人の仲間に入れてもらいビールで乾杯。久々の山行き、一年ぶりの守門大岳の山頂。まだ真っ白に雪を抱く魚沼三山から浅草岳に連なる銀嶺を思う存分に焼付け帰路についた。


◆ ゆっくり、じっくり自分の足で歩いてゆこう

 今年初挑戦の山歩きを、無事に終えることができた。自分のゆっくりペースのせいだったと思う。昨夏のけが以来、ひざ関節の痛みも少々加わって、足腰に自信を失いかけていた。今日の成功で少しは自信めいたものが得られたような気がする。還暦も超えて2年。無理はきかない年代だ。これからも天候をみながら、体調に合わせながら自分のペースを保ちながら歩ける時間をつくっていきたいものだ。ようやくスタートとなった山行きだが、今年ははたしてどのくらい実現できるだろうか。次のチャンスを楽しみにしている。

”白雪に踏み跡をつける(守門中腹をゆく)”


トップへ

前  へ

次  へ