30.越後中越の秀峰、守門岳入塩コースを歩く

     〜 延々とつづく若ブナの樹林を行く快適コース 〜

あなたは人目のお客さんです

◆ 春先、真っ白に雪をいただく守門岳、心洗われる秀峰

  
春3月、越後の山々はどこも真っ白に覆われている

 春3月、越後の山々はどこも真っ白に覆われている

 6月上旬、今年初めての守門山行きが実現した。毎年彼岸のころ単独行を恒例にしてきた。守門行きは楽しみの一つである。  この山は、広い蒲原平野、なかでも中越地域のどこからも望め、特に春陽輝くころ山肌が真っ白に包まれた姿は言いようのない感動を与えてくれる山である。自分にとって遠くから眺める心洗われる秀峰の山である。
 春、山の雪が溶け出し、徐々に雪形が変化してくる。わが生まれの蒲原平野では、昔から山肌に「とんぼ取りの地蔵さん」が現れると田植えが始まるとの習わしがあった。大きな地蔵さんが、竿をあげている姿に見えるのである。地域の生活に溶け込んだ山でもある。この時期その雪形は消えていることだろう。
 いつも守門山を登るとき、あの雪形の場所はどのあたりなのだろうかと思いながら登っている。いまだにそこを知らない。

◆ いわくつきの入塩川コースを登る 

 守門山を行くコースは、幾通りかある。いつも行くコースは栃尾・栃堀からの保久礼コースか、旧守門村・二分コースが一般的でいつもこのいづれかをとってきた。今回は、我々にとっての「いわくつき」の入塩川コースをとることになった。
 というのは三年前、同行メンバーの3人で今と同じ残雪期、私にとって初めてこのコースをとった時、守門大岳からの帰途、深いガスの中、ブナ林の雪上で行く道を失い、さんざん彷徨したあげく藪に迷い込み、雨と寒さのなか、一夜ビバークしたことのいわくつきのコースだったのだ。そんなこともあり、今回は、ゲンをかついで別のメンバーを加えることを提案、ベテランのI・Nさんに参加してもらい、他にK君の奥さんを含め5名のメンバーとなった。
 入塩登山コースは栃尾の北東、入塩集落を東に入った所に登山口がある。道も地元の方であろうか手が入っており、きれいに整備されている。多くの登山家が押し寄せることもなく、静かに登る格好のコースとなっている。

◆ 続く若ブナの樹林、癒しの道を行くごとし 

 入塩コースは、はじめ塩谷川に沿った沢筋道を幾度となくわたり返して行く。K君の奥さんは二週間ほど前単独でここを登った時、雪解けの増水で度々難渋したという。今日は、増水もなく安心だ。しばらくは全く展望はないが深いヤブでもない。この時期、木々の若芽がまぶしいほどだった。
 きつい急坂もなく、沢筋から離れ一登りしたところで三角点の標柱のあるブナ林の場所に着いた。旧下田からの守門川に沿って伸びる中津又岳、大岳へと続く稜線なのだろう。スタートして1時間15分だった。一息つくのに丁度いい場所だ。
 この先がこのコースの醍醐味だった。なだらかな山道の両側にブナ林が続くつづく。そう大木でもなく、直径30pほどの若ブナの林立。一様に10数bまでにまっすぐに伸びている。うっそうとした中に白肌の幹が浮かぶ。若芽のみどりが新鮮だ。行く道の上は枯れ葉が敷き詰められていて、クッションを踏んでいるようで快適だ。何キロも続いているかと思われた。最近あちこちで紹介されている「美人林」などは優に超えていることは一見すれば納得できるだろう。
 新鮮な空気を一杯に吸い込み、まさに癒しの道を行く感がした。
守門・入塩コースのブナの樹林
 守門・入塩コースのブナの樹林

◆ 八十里越えを眺望、足元には鮮やかなツバメオモトの群落 

 尾根道はずっと比較的なだらかだ。左手東側にはすぐ目の前に番屋山(933M)が見え隠れし、はるか会津へ続く八十里越えが見通せる。八十里などあろうはずもないが、昔はそれだけつらく長い道のりだったのだろう。確か戊辰戦争の際、長岡藩の河合継之助が会津へ落のびたと伝えられている。歴史の古道でもある。
 ブナ道を行くとすぐに〆掛小屋と表示された小屋が現れる。三角型のトタン屋根の小屋。変わった名前が印象深かった。山仕事人の休み場でもあったのだろうか。なおも続くブナの林を行くと雨晴(あばらせ)の清水に着く。ブナの林の一角に清水が流れ出ているおいしい水だった。
 高度を上げて残雪の消えた尾根上に出ると、葉が実に鮮やかなグリーンの大柄なツバメオモトが次々と現れてきた。イワウチワ、色鮮やかなショウジョウバカマ、ヤシオツツジ、名も定かでない花々が沢山咲いていた。他のコースと違った味わいの深いコースだ。

見事に育って咲くツバメオモト 鮮やかに咲くショウジョウバカマ

見事に育って咲くツバメオモト  /  鮮やかに咲くショウジョウバカマ"

◆ たっぷりの雪上で乾杯、至福の山頂のくつろぎ 

 雪上のブナ林を超えると雨晴(あばらせ)の展望を経て中津又岳(1、210M)へ到達する。俄然展望がひらけ、川内の山塊から浅草岳、魚沼三山、それらの奥に広がる山並みまで一望できる。まだまだ豪快な雪庇も残っていて見ごたえがある。
 中津又岳から大岳頂上はほんのひと登り、20分ほどで到達。笹薮に囲まれた狭い山頂の一角に鐘がつけられている。ここからの眺望もすばらしい。すぐ東側にはまだたっぷりの雪があった。冷やしたビールでとにかく乾杯。雪上の祝宴がはじまった。
 久しぶりに会った山仲間との語らいはあっという間に2時間が過ぎていった。雪上をとおり過ぎる涼風とたっぷりの陽射しを受け、眼前の山脈を肴にした談義は、まさに至福の心地の時である。皆な60歳台を超えてはいても、もうしばらくは続けられそうだ。仲間に感謝々々。
 帰路も同じコースを帰った。今晩の晩酌用に格好の山菜を適度に調達しながら、2時間半ほどかけゆっくり下った。このコース、少し道のりは長いが、豊かなブナ林、みごとな花々、はるか遠くまで見渡せる眺望とで、十分満足できるこの時期のお勧めコースといえる。

谷間に突き出た雪庇 鋭く槍の穂先を思わせて残る雪塊

谷間に突き出た雪庇  /  鋭く槍の穂先を思わせて残る雪塊

 
遥か袴岳を望み、中津又岳手前に残る雪庇
 
遥か袴岳を望み、中津又岳手前に残る雪庇

 
守門のタムシバ
 
守門のタムシバ

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