31.風吹大池〜蓮華〜朝日岳を行く
〜 静かな風吹大池散策、蓮華―朝日岳硬い雪渓と強風、濃いガスに難渋 〜
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◆ 夏山縦走登山、風吹大池〜蓮華温泉〜朝日岳
蓮華温泉の奥に静かにたたずむ風吹大池
夏山恒例の縦走登山、今年は風吹大池〜蓮華温泉〜朝日岳を折り返す2泊3日の花旅を満喫するコースだった。
7月末を設定した今年は、思いのほか梅雨が長引きまだ梅雨前線が停滞中、そんな中の27日朝6時長岡を出発した。途中西山インターで女性1名を加え、メンバーは4人である。 コースの予定は第一日目、風吹大池に登り、周囲散策。下山して蓮華温泉泊り。 第二日目、蓮華温泉〜白高地沢〜花園三角点〜朝日岳〜朝日小屋泊り。 第三日目、二日目コースを折り返して蓮華温泉着。入浴して帰路に着く。といういづれも静かな花の山旅を満喫する絶好のコースの予定であった。 糸魚川に近づくと激しい雨に変わった。平岩の蓮華への入り口では山から姫川に注ぐ河口が濁流でしぶきあがるほど。数日来からの山中の雨の激しかったことが思いやられ、先行きの不安が脳裏をよぎっていく。
◆ 花も豊富、心落ち着く草原と静かなたたずまいの風吹大池
一日目の風吹大池は初めての経験だった。当初はこの山がどこにあるかも見当がつかなかった。調べてみると信越の国境にあって信州側から花を求めてくる人の多い、近年人気のコースであることを知り、どうしても行ってみたくなった。
蓮華温泉の2キロほど手前にある登り口に着くころには雨もあがっていた。雨具をつけ登りにかかった。 登り2〜3時間と想定していた割りには、結構きつい急登がはじめから続いた。深い樹木の中、ひときわ立派なヒノキの大木が目立つ。諏訪の御柱もこんな深い山から伐りだされるのだろうか。 道々、時期は過ぎたにもかかわらずネマガリダケが沢山出ている。急ぐこともなくタケノコ採りに興じながらの楽しい登りだった。 途中、雨の心配がなくなって遠くの眺望も効いてきた。ゆるやかな草原にさしかかるといろんな花が飛び込んできた。ずっと続いていた水芭蕉やゴゼンタチバナ、マイズルソウに加え、イワイチョウ、アヤメ、トキソウ、ツガザクラなど珍しい花が次々と姿をあらわして目を楽しませてくれる。
イワイチョウ / 雨にぬれて咲くイワハゼ"
ひっそりと咲くトキソウ / サクラソウ
草原の行き着いた先に、覆われた木々の間から湖面がのぞいてきた。かなり大きそうだ。少し下ると湖面全体が見えてきた。ひっそりと静まりかえっていた。標高1,800bにある風吹大池である。池のすぐ脇に3棟からなる風吹山荘が建っていた。カギのない一棟にあげてもらい休憩をとった。一時間ほど休憩し、池の周回コースをとって帰路についた。 大池と広い草原。色とりどり、さまざまの草花の群生。第一日目の風吹大池の散策は、我々だけの静かな別天地のひとときだった。
◆ 蓮華温泉に浸かり、祝杯で満を持す
山の湯宿・蓮華温泉ロッジ
山登りにきて温泉三昧とはありがたい。風吹大池の疲れを温泉で流し、冷えたビールで祝杯。贅沢な山旅を感ずる。
見れば同宿の半分以上は、山行きの同輩のようだ。 風呂の中で、今朝朝日山荘を発って蓮華温泉に夕方着いたという埼玉県からきた高校生の一団に話を聞いたら、「朝日岳〜蓮華温泉まで12時間を要した」、「雪渓が硬くアイゼンがなかったら通れなかった」と大変だった様子を語っていた。例年になく残雪が多いことが想像された。 部屋に戻って持ち込んだ手製の飲み物をじっくり味わいながら、人生の四方山話に花を咲かせ、明日の天気回復を願って9時床につく。
◆ 12年前の栂海新道縦走コースを辿る
二日目(28日)、5時起床、6時朝食。天候は芳しくなし。雨具を着用。6時30分蓮華温泉を出発。
12年前、山中2泊3日行程の蓮華温泉〜朝日岳〜朝日山荘〜栂海新道〜日本海へと縦走したことが思い返される。思い出はところどころの記憶しか残っていないが、好天の3日間だったこと、白高地沢の鉄橋が壊れていたこと、朝日岳山頂の景色、栂海新道がアップダウンの多い、長丁場で苦労しながらも楽しかった記憶だけが鮮明に思いだされた。 しっかりした木道を下って1時間で兵馬の平。湿地帯の花などが盛りだった。
ショウマの一種? / ?
白高地沢にさしかかる頃から雨足が激しくなってきた。沢は白い激流となって岩を噛んでゴウゴウと流れていた。以前の壊れた橋は、5段ほどの鉄はしごを登って、両岸の高い岩に渡された鉄橋をわたるように架け替えられていた。ここまで3時間を要しているが、まずは予定通り進んできた。ここからは徐々に登りとなり五輪尾根へと続いている。
◆ 濃いガス、硬い雪渓で道を見失う
花園三角点から先、栂海新道分岐に至る間でいくつかの雪渓を越える際、雪渓に撒かれたベニがらのルートを見失い道に迷ってしまった。硬い雪渓のため踏み跡の痕跡もない。時間は出発して7時間経過の午後1時半ころだった。 濃いガスの中で、ピークをつめて方角の確認も考えたり、調査隊で探索もしたが全くルートを探し出すことは不可能だった。一同ビバークも覚悟で、雪渓のきわの安全を確かめながらもう一度ルートとおぼしき左方向をつめることとして行動を始めていたとき、近くにまぼろしのごとく動く人影を発見した。尋ねると蓮華温泉を単独で朝発って朝日岳山頂近くまで来たが、濃いガスと強風のため断念して蓮華へ引き返すのだという。 道を見失っている事情を説明し、同時にここまで7時間かかった道を引き返す困難さを訴え、我々の道案内がてら一緒に朝日小屋まで同行を勧めた。結果了解してくれるところとなって先導役もでき九死に一生を得ることとなった。まさに地獄に仏、安堵の胸をなでおろすこととなった。
◆ 先導者を得て朝日岳山頂を極め、朝日小屋へ安着
単独の登山者は、愛知県日進市から来た方で、還暦を半ばを過ぎた私とほぼ同世代のベテランでIさんといった。Iさんがもと来た道でもありすぐに道は判明。山頂への道を急いだ。ガスと強風と雨はますます強まって行く手を阻んできたが、先導者を得て迷うこともなく心強いものだった。途中、栂海新道の分岐点を通過、一瞬12年前この道を縦走したことが思い返されたが、雨と強風をこらえるのが精一杯で感慨の余裕もなかった。午後3時半には無事朝日岳山頂を通過、4時30分には朝日小屋へたどり着くことができた。
朝日岳山頂に立つ
◆ 安全優先、雪渓越え断念、北ノ又小屋へ下る
一時は、進む道を失い途方にくれたが、救世主に出会い無事小屋に入ることができた。小屋は雨にたたられた登山者でごったがえしていたが、親切な朝日小屋の女性主、清水ゆかりさんのねぎらいの言葉でホッと生き返った思いだった。 反省するに、いつもの夏山の気分でいて、アイゼンを用意してこなく、行動が制約されたことにあったようだ。今冬の異常な豪雪が雪渓を多く残しかつ、硬くしていたことを甘く見てしまったのだ。結局、蓮華温泉への折り返しは、アイゼンのない雪渓下りは危険と判断、北又小屋へ下って泊駅を経て再び蓮華温泉の車に向かうことに衆議一決変更した。 今夏の北アルプス縦走は、明けぬ長梅雨で雨、風、濃いガスに悩まされ続けたが、ほどほどの花々にめぐり合い、長距離を互いに助け合い、他人の手も煩わすことなく無事やりとげ、遭難寸前での貴重な教訓も得ることができた。 この経験を、自分のこれからのまだいくばくかの山行きの糧としたい。ありがとう、仲間に感謝しつつ。
ヤマハハコ / オオバギボシ
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