43. 秋の風情ただよう奥白根山を行く

   〜2千米、ダケカンバの林で野生カモシカとの出合い〜

あなたは人目のお客さんです


奥白根三山と中禅寺湖を望む−奥白根山頂から 


◆ 初めての挑戦、初秋の奥白根山

 8月の那須岳以降、山行きの予定が10月までなく、少し待ち遠しかった10日ほど前、奥白根山行きの誘いが飛び込んできた。これまで日光方面の山行きはまったく経験がなく、未知の世界だった。これ幸い、絶好のチャンスと仲間に加わえてもらった。
 メンバーは女性1人、男性4人の計5人。やっぱりそれがしが一番の年かさだった。最近の山行きでは、メンバーの中でいつも最高齢となっているのがチョッと気にかかる。8人乗りのワゴン車に楽々乗り込み、午前5時、関越道を奥白根山へ向け出発した。

◆ 首都圏の近さか?群れなす中高年登山者 

 誘いを受けた奥白根山は、登り口がどこなのかの見当も、正直知らなかった。ネットで尋ねたら、丸沼高原の日光白根山ロープウエーで山頂駅からわずかで行けるとの説明があった。まさか、このコースを行くわけでもなかろうと思ってはいた。車中で分かったのだが、やっぱり別のコースがあり、菅沼登山口が目指す目的地であることが分かった。
 7時半到着。すでに駐車場はほぼ埋まっていた。この時間帯でこの込み具合、もうかなりの登山者が入っている様子が伺える。百名山の一つでもあり、首都圏の近さもあってのことなのだろうか。実際に登りの道中は、列をなす中高年者でにぎやかだった。7時50分、堂々とした立派な”白根山登山口”と刻んだ碑のある菅沼登山口をスタートした。

◆ 弥陀ケ池、上は早くも紅葉の気配

 菅沼登山口でも標高は1,750Mの高さ。ダケカンバとおぼしき、細くそろった樹林帯が続く。越後の山と違い、この高さにブナの木は一つも見えない。しばらく行くと今度はオオシラビソとおぼしき樹林帯となった。いづれも越後のひどいやぶと違い樹間もすいていて、木と木の間の見通しが結構よくきく、感じのよい樹林帯だった。越後の山で見慣れた樹林の様相とはかなり違うのを感じた。
 林の道を登ること1時間半。ひょっこり平らな水辺に到着した。標高2,300Mに静かに佇む弥陀ケ池だった。周辺の木々が少し色づいている。早くも紅葉の気配がただよっていた。仰ぎ見る正面はるか上に、荒々しい岩山が構えていた。奥白根山頂はその奥にあるのだという。その急登さにいささかうんざりする。



 左 静かに佇む弥陀ケ池 / 右 紅葉の気配感じる弥陀ケ池 



 左 これから目指す奥白根山 / 右 荒々しい岩の登山道 


◆ 山頂は360°の大パノラマ 

 標高2,300Mの弥陀ケ池からこそが本当の登りであった。弥陀ケ池で、右の座禅山への道とロープウエー山頂駅から来る道との合流点があって、ここから高度300Mを一気に奥白根山頂にたどる急登路だった。
 ガレ場の道と大きな岩場の道を踏んでどんどん高度を上げてゆく。それにつれ視界が開けてきた。眼下に五色沼がまず飛び込んでくる。遠くに尾瀬燧ケ岳の双耳峰がくっきりと見えている。最後に岩を駆け上がると2,577Mの頂上だった。10時35分山頂到着。そこには、まさに360°の大パノラマが展開していた。中禅寺湖に連なる日光三山(男体山、女峯山、太郎山)はもちろん、尾瀬一円、遠くは富士山も確認できた。さすがは関東から東北最高峰、2,500Mを超す名峰の良さを知った。

 

 左 奥白根山頂から尾瀬燧ケ岳方面 / 右 奥白根山頂から男体山と中禅寺湖

◆ 帰路のもうけもの、野生カモシカとの出合い

 広くもない岩の山頂には大勢の先着隊が陣取っていた。近くの岩の小ピークにも人また人。そそくさだったが山頂の大パノラマ眺望を満喫した後、大岩を風よけの格好の場所で大休憩。いつものことながら祝杯と腹いっぱいの宴会。なんだかんだの楽しい語らい、自家製ブレンド酒など味わい、焼肉にキムチ鍋とでおよそ2時間、この日も楽しい山上パーテーとなった。
 宴会を終え、五色沼を経由して弥陀ケ池を通って帰ろうと急坂を下っていたら、ダケカンバの林の中に、突然1頭のニホンカモシカが現れてきた。我々の極くそばの草むら、見通しのきく目の前でエサを探している様子。珍しい出現に、一同しっかりカメラに収めさせてもらった。
 最近、カモシカの被害が伝えられている。およそ標高2千3〜400Mもあろう高さに、目の前から逃げる様子もないカモシカの出現に自然環境の変化を思わずにいられなかった。それにしても記念写真のいいチャンスと、この山行きに記憶に残る出合いをもらった一瞬でもあった。



 左 突然姿を見せたカモシカ / 右 エサを探すカモシカ

 雨の心配もなく、さりとて夏の暑さも過ぎ去って秋めいた天候のなかを急がず、あせらず、はじめての奥日光の山歩きをじっくり味わえた一日であった

左 始まった紅葉−上は奥白根山頂 / 右 五色沼


(H20年9月29日記)

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