9. 巻機山〜朝日ジャンクション〜清水峠縦走

─ 名だたる越後のヤブこぎを体験 ─

あなたは人目のお客さんです

<コースタイム>
6月5日 6月6日
 清水   8:20  巻機避難小屋   4:40
 5合目 9:20 9:50  米子頭山  7:00 通過
 7合目 11:20 通過  柄沢山  9:45 10:00
 巻機避難小屋 13:00  泊り   檜倉山 11:45 12:05
             大烏帽子 14:20  通過
            ジャンクション 16 :00  16 :20 
                清水峠 17:30 通過
         清水車道到着 19:50     
<第1日目はのんびりタイムのため、参考タイムです>

巻機山頂からこれからたどるコースをはるかに望む

《右写真は「巻機山頂からこれからたどる柄沢山〜檜倉山〜大烏帽子〜朝日岳コース」をはるかに望む》

◆ 天候の具合で2泊3日予定を、2日で強行

 今年の仲間の山行き計画のメーンイベントの一つ、巻機山〜朝日ジャンクション〜清水峠へと下る上越県境の縦走コースをたどってきた。予定のコースは、・第1日目 長岡ー六日町ー清水ー巻機山避難小屋(泊) ・第2日目 巻機山避難小屋ー巻機山頂ー米子頭山ー柄沢山ー檜倉山ー大烏帽子山ージャンクションピークー清水峠小屋(泊) ・第3日目 清水峠小屋ー七ツ山小屋ー蓬峠ー土樽駅であった。
 6月5日〜8日、を予定した。メンバーは職場の現役・OBを含めた男性6名。2〜3日前までは天候もまずまずだったが、九州地方から梅雨入りも宣言され、新潟県もやがて早めの梅雨入り宣言が心配される時期ではあった。
 6月5日の早朝長岡6時33分発の越後湯沢行きに乗り込んだ。
 8時に到着した登山口、清水の桜坂駐車場には、土曜日のこともあり満車状態にびっくり。百名山の人気の山のせいだろうか。
 1日目の天候は晴れ。8時20分一行は勇んで出発した。まずまずだった予定の天候がずれ、3日目の行程であった、清水小屋泊り〜七ツ小屋山〜蓬峠周りを短縮して急遽その日のうちに清水へ下る強行軍とあいなった。名だたる「越後のヤブ」の異名のとおり、残雪期をほぼ過ぎたこの次期、難行・苦行のやぶ漕ぎを体験。途中から自分一人完全にグロッキー状態となってしまい、仲間に助けられながらも完遂することができた。還暦人生の中で、今は達成感で一杯だ。

◆ のんびり巻機山もいいもんだ

 出発が遅いせいか、これほど満車の状態でも会う人は少ない。既に汗して登っているのだろう。せかせかと人に会わないのもまたいい。
 1時間で5合目展望台に到着。早くも全身汗びっしょり。3日行程の背中の荷がこたえている証拠だ。やや不安が走る。ここからの眺めはコメゴの滝もさることながら、南に望む太源太山の切り立った姿が見ごたえがある。今日は時間がたっぷりある。ゆっくりと休む。
 続いてすぐの天狗の岩眺望場でもゆっくり汗を沈める。結局、今夜の泊りの巻機山避難小屋へ入ったのは13時であった。時間を気にせず、のんびり、ゆっくりの巻機もいいもんだ。小屋の前にはまだたっぷりとした残雪があり、陽射しもあって眼前に割引山頂、巻機山頂が望め絶好の休養場所だ。14時過ぎ、賑やかな話をつまみにささやかな宴会をはじめ、17時過ぎ2日目の行程に備え早々と床についた。  明日の天候次第では、早めに出発して清水峠をその日のうちに一気に清水に下りることも覚悟することにした。

◆ 米子頭山手前までほぼ順調に進む

 第2日目、巻機山避難小屋を4時45分に出発した。思ったよりそう寒くはない。天気予報によれば関東の北部、東北の南部では夜まで雨は降らない。夜半に入ってから雨との予報。今日一日は持つと確信して出発した。
 御機屋を通って巻機山山頂1967mを5時10分に通過。まずは順調。この先わずかで右に下りて米子の頭山〜柄沢山〜大烏帽子へと続く分岐となる。この分岐点が5時15分だった。いよいよ縦走の始まりだ。
 分岐点から縦走路の道にはフエルト様の黒のカーペットもどきのものが暫らく敷いてあって手入れが行き届いているわいと感心させられた。が、しかしそれは見せかけ。進むうちにたちまち行く手をはばむやぶとなった。残雪でもあればまだしも、今冬の小雪では期待できず深いヤブを漕ぐアルバイトとなった。多少北東斜面に残った雪渓を踏むときが唯一疲れを癒してくれた。ヤブは、笹のやぶ・石楠花のやぶ・ハエマツのやぶ、それらの混合したやぶと実に多彩に迫ってきた。
 足元にはシラネアオイ、色の濃いコイワカガミ、山桜、石楠花の花々が迎えていた。分岐からほぼ2時間、苦労しながらも無事米子頭山に7時到着。

◆ 〜柄沢山〜檜倉山〜大烏帽子山連続ヤブこぎの挑戦

 この後、柄沢山への道も平坦ではなかった。昔この縦走路を通った人も多かったのかも知れない。やぶをかき分けていくと確かに踏み跡らしき道が通っているのが感じられた。しかし最近は来る人もまばらか、来ても残雪期なのだろう。最近手入れされた様子は全くなく、自然のまま、すっかり夏道はヤブで閉ざされていた。
 とりわけ、檜倉山〜大烏帽子の間はヤブが凄まじかった。背丈の笹ヤブはまだ条件が良い。ひどいのは、石楠花の林とハエマツの林だ。足元は定かにならず、かき分けもならず、とにかく行く手を阻む。難航した。時間と体力を著しく消耗させられた。
 それにしても我がリーダーが良かった。かってこの道を経験していたM君だ。ほとんど踏み跡の無いヤブの中を動物的カンで前進する。するとかすかに人の踏み跡らしきルートに出あう。何度か見失ってはまた次を見つける。石楠花の林とハエマツの林を出来るだけ避けて密度の薄い笹ヤブを目がけては突進するテクニックには感心させられた。彼の存在なくして完遂は不可能だったろう。長年のキャリアに助けられた。

◆ 檜倉山山頂はのどかな池塘

檜倉山山頂のどかな池塘
 柄沢山を越え檜倉山山頂にようやくだどり着いたのが正午前だった。7時間余りを要したことになる。ここだけは唯一別天地に感じた。小さな池塘があって、結構広い草原。格好の休み場となっていた。余裕があればゆっくり眺望と体力温存に努めたい場所だった。
 天候がにわかに変わりだしてきた。この後おそらく雨となりそうだ。まだ先の距離は長い。軽く昼食をとって先を急ぐこととなった。

◆ 大烏帽子山を経てジャンクションピークへ

 13時頃からかなり強い雨と風となった。このあたりでついに上衣雨具を着用した。大烏帽子へのルートもヤブが続いている。小生一人遅れる。疲労から両足後ろ太ももがひきつってなかなか進めなかった。つらいヤブの直登もあった。必死にがんばって、遅れながらもどうにか大烏帽子山頂に立つことができた。14:20分すぎだった。
 この後さらにジャンクションから清水峠小屋そして清水へと4時間余りを要する見込み。夜の8時を過ぎそうだ。何とか早めに着けたい。一同そんな思いが一杯だった。ここで疲労困憊の小生の荷を分けることとあいなった。申し訳ない。身軽になってジャンクションピークへ進む。なんとこの大烏帽子山頂からは、それまでと全く違い細いながらもしっかりした道がついていたのに助けられた。16:00過ぎ待望のジャンクションピークへたどり着いた。
一同は雨と寒さの中ピーク点で待っていてくれた。しばし水分補給と甘味料を補給して疲労回復を図った。後はくだりのみということに勇気を得てピークを後にした。

◆ 清水峠、井坪坂を経て清水〜19:50到着

 朝日岳ジャンクションピークを16:20分出発した。雨足は少し弱ったが風が強くなって依然視界は効かない。暗くならないうちに清水に辿り着かなければならない。急がねば……。時折り、雲の切れ目が現れ、バックに一瞬朝日岳が、山頂にかすかに残雪を残した姿を見せてくれ、その雄大さに圧倒された。17:30分清水の小屋を左に見て通過した。さらにひたすら井坪坂コースを下り、日もとっぷり暮れた19:50分登り口車道最終地点に到着することができた。

米子頭山頂下雪渓で

◆ 好天のなか、余裕あれば絶好のコース

 今回は齢と体力、それにいろんなアクシデントでダウン寸前となってしまった。反省すべきことも多かった。でもコースを子細に見れば、魅力に富んだ素晴らしコースであることが分かった。西南に信越国境・南の眼前に谷川連峰の雄姿が、北東方向には越後に接する群馬・福島県境の山なみが一望できる大パノラマが展開していることだ。苦労させられたひどいヤブも考えて見れば、時期には素晴らしい花を見せてくれるはずだ。とりわけ悩まされた石楠花の群生はおそらく見事なものであろう。
 また笹ヤブの足元には薄ピンクのシラネアオイが咲き誇っていた。一番推奨できるのは、このコース、距離は長いがアップ・ダウンが比較的少ないことではないだろうか。そしてもう一つは、人が多く入ってなくて静かで自然がそのままにあることである。
 もし体力があって、時間がとれ、ゆっくりしたペースで行けるなら絶好のコースに違いない。  

H16.6月巻機のしゃくなげ

 右上 米子頭山頂下雪渓で
 
 
 左  6月巻機山のしゃくなげ





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